泌尿器外来 担当:脇田 春彦
前立腺肥大症
前立腺は膀胱の出口に位置する男性特有の臓器です。通常はクルミ程度の大きさですが、加齢と共に体積が増大する傾向にあります。高齢の男性の殆どに前立腺肥大症を認めるといっても過言ではありません。
【症状】残尿感、頻尿、尿意切迫感、尿勢低下などが挙げられます。
【診断】I-PSS(国際前立腺症状スコア)という評価表で症状の点数化を行い診断します。
【治療】α1ブロッカーという薬が使われます。前立腺を収縮させる交感神経の働きを抑えることで、上記のような排尿障害を改善します。頻尿傾向が強い方には膀胱の過剰な収縮を抑える抗コリン薬という薬を併用することもあります。また比較的新しい薬としては、前立腺で男性ホルモンがより活性の強い物質に変換されるのを抑制することで前立腺自体を小さくする治療薬もあります。
このような症状が当てはまる方は前立腺肥大症の可能性があります
前立腺癌
前立腺は前立腺液を分泌する腺組織としての役割もありますが、この腺組織の上皮細胞から発生する癌が前立腺癌です。稀に前立腺の神経内分泌細胞から発生する前立腺癌もありますが、こちらはより悪性度が高いことで知られています。しかし一般的に前立腺癌の進行は緩除であり、実際に、臨床的に問題にならない潜伏癌(ラテント癌)は3割にものぼるとしている報告もあります。
【症状】前立腺に限局している場合には、殆ど症状がありません。進行してくると血尿が出ることもあります。腫瘍が他臓器に転移した場合は転移した臓器によって症状は異なります。例えば骨に転移すれば骨痛が出現します。しかし転移が小さい場合は無症状です。
【診断】前立腺癌の腫瘍マーカーにはPSA(前立腺特異抗原)があります。PSAは正常の前立腺でも合成されているタンパク質で前立腺液中に分泌されています(一部は血液中にも流入しています)。PSAは前立腺の炎症や肥大症でも上昇しますが、一般的に前立腺癌では低下することなく経時的に右肩上がりに上昇していきます。このPSAの値や、年齢、直腸診の所見から前立腺癌を疑う場合には確定診断のため前立腺針生検を行うこととなります。針生検を行う場合には他院にご紹介しています。
【治療】ホルモン療法、放射線療法、手術があります。放射線療法と手術に関しては放射線設備や入院施設がある病院で(多くは生検を行った病院で)行って頂くことが多いです。
過活動膀胱
過活動膀胱とは膀胱が過剰な働きをすることで起こる、頻尿と尿意切迫感を主な症状とする病気の総称名です。前立腺炎や膀胱炎でも似たような症状が起こることがありますが、過活動膀胱の患者さんの尿はきれいなことが特徴です。では過活動膀胱の原因はなにかというと、高齢男性の場合は前立腺肥大症であることが多いです。女性や、男性でも前立腺肥大症に当てはまらない方の場合は、神経系の障害(脳梗塞、糖尿病による末梢神経障害、脊柱管狭窄症、脊髄損傷など)、加齢や出産による骨盤底筋群のゆるみなどが挙げられますが、原因が同定できないことも多くあります。
【症状】頻尿、尿意切迫感
【診断】過活動膀胱症状質問票で症状を点数化し、診断します。
【治療】膀胱の過剰な収縮を抑える抗コリン薬という薬を使用します。同時に骨盤底筋体操や膀胱訓練などの生活療法も併用します。
このような症状が当てはまる方は過活動膀胱の可能性があります
尿路系の炎症
前立腺炎
【症状】発熱、頻尿、排尿痛、膿尿が主な症状です。
【診断】尿検査、直腸診、血液検査、細菌培養検査
【治療】抗生物質の点滴や内服で治療します。前立腺肥大症を合併している方が多いのでα1ブロッカーを併用する事もあります。
膀胱炎
【症状】頻尿、排尿痛、膿尿が主な症状です。稀に血尿が出ることもあります。熱は出ません。
【診断】尿検査、細菌培養検査
【治療】抗生物質の内服で治療します。頻繁に繰り返す方には悪性疾患がないか精査します。
漢方薬を併用することもあります。
腎盂腎炎
【症状】発熱、背部痛が主な症状です。膀胱炎のような症状を伴うこともあります。
【診断】尿検査、CT検査、腎エコー、血液検査、細菌培養検査
【治療】抗生物質の点滴や内服で治療します。結石や腫瘍などで尿路系に閉塞があるような場合には入院治療が必要な場合が多いので入院設備がある病院にご紹介します。
その他血尿、ED(勃起不全)など泌尿器のことで気になることがあれば何でもご相談下さい。
女性の方も男性の先生には相談しにくいことでも是非いらして下さい。